この本はこんな人にオススメです!
- 手縫いで自分の手でカバンを作りたい
- 世界で一つだけのマイバッグを作りたい
- レザークラフトの基本を知りたい
「手縫いの革製品を作る」 と聞くと職人さんの世界をイメージされる方も多いのでは無いでしょうか?
職人の世界……眼光鋭い、いかにも頑固そうな親父さんが
おいらはもう何十年もカバンづくりやってんでい。
重ねた年期と技術がちげぇよ。
生半可な気持ちでカバンつくりてぇなんざ言うんじゃねえやい!!
(※個人のイメージです)
親父さんのイメージや発言は冗談ですが、「重ねた年期と技術」に関しては間違いでは無く、熟練のカバン職人の技術は卓越したもので、一朝一夕で真似できるようなものでもありません。
でもそれはあくまで職人、プロフェッショナルの世界での話です。
ただ!
もしあなたが手縫いのカバンづくりに興味があるけど敷居が高そうで迷っているならば、ぜひ今回オススメする本を手に取ってみていただきたい。
その苦手なイメージと取り払い、裁縫が苦手な方にも気軽に始められる内容になっていることを保証します。
この本で学べる事
- 革の知識(種類や手入れなど)
- 用具・材料について
- 基本のテクニック(革の裁ち方、縫い方など)
- 型紙の簡単な知識
- カバン作りは誰にでも出来て楽しいという事実
野谷久仁子 著 「手縫いで作る革のカバン」
今回紹介する本は野谷久仁子さんの著書「手縫いで作る革のカバン」です。
野谷久仁子さんはPORTERで有名な吉田カバンの創業者 吉田吉蔵さんの次女です。
ご自身も帽子デザイナーをしていた経歴があり、のちに父である吉蔵氏からカバン作りのノウハウを習います。
そんな野谷さんが書かれた「手縫いで作る革のカバン」はどのような本なのか、どのような人に見ていただきたい本なのかを紹介していきます。
気になる本の評価
本編に入る前に、実際にこの本を買われた方々が書いていたレビューをまとめてみました。
80件のレビューに対し
☆5 : 38% / ☆4 : 32% / ☆3 : 21% /☆2 : 4% / ☆1 : 4%
という評価になっておりました。(2023.10月現在)
☆5と4を足して70%の評価ですので、この本に対する好意的な方が多いことがわかります。
では高評価の方がどんなコメントをしているのか、具体的なレビューを一部紹介させていただきます。
高評価が圧倒的に多いので間違いなく良い本なのですが、もちろん低評価のコメントも。
全てが高評価だと「明らかに商売してんな」感が出てしまうので低評価も紹介しましたが、実際に高評価が圧倒的に多かったです。
一定数の人数を相手にすれば全ての方に良い評価されることなんて無いわけですが、この高評価の偏り具合は率直に言って良い本だという証明になっているかと思います。
縫う前に準備するもの
本の序盤で、カバンを作る前に以下の点を説明してくれています。
- 主素材である革の知識
- 作るための道具と材料
どちらも革カバンを作る上では欠かせないポイントです。
さらっと紹介していきます。
革の種類
この本では革の種類を以下の3つに分類して説明しています。
「動物による分類」「なめし方による分類」「仕上げ加工による分類」
『どのようなカバンを作りたいのか=どのような雰囲気の革を使いたいのか』とも言えますので、この基本知識は革をセレクトする上で重要になってきます。
もし革の選び方に自信のない方は、イメージする写真を用意して革屋さんで直接聞いてみることをオススメします。
革屋の店員さんはプロですから、丁寧に説明すればきっとあなたの望む革をきっと紹介してくれるでしょう。
良い店員さんにあたれば革の色々な種類やさらにマニアックな知識も教えてくれるかも!
革の買い方と手入れ
本の中で、革の買い方は一枚革(半裁革)をオススメしています。
一枚革ならじっくりと自分の気に入る革を探せますし、革の部位ごとの性質も理解した上で裁断できます。
小物を作りたいのであればそこまでの革は不要でしょうが、トートバッグなどを作りたいのであればそれなりの量が必要になります。
作りたいものがどのくらいの用尺を必要とするかよく考えて購入しましょう。
革の手入れに関してもこの本で紹介してくれています。
いずれは必ず役に立つ知識ですので、こういう大切な情報もさらっと載せてくれているところもこの本の良いところです。
用具・材料
手縫いカバンには必須な用具・材料を一つづつ丁寧に紹介しています。
モノづくりが好きな方には共感していただけるかと思いますが、道具を見たり揃えたりするとワクワクしませんか?
道具を揃えることで「クラフトマンの仲間入りだ」という製作へのモチベーションが上がるような気がします。
【裁断のための用具】 革を切るための「革包丁※」、「重し(ジャムの瓶などで代用可)」、「ステンレス定規」、「裁断時の下敷きや、革の反りを正すための「ビニ板(カッティングマットでも可)」、印付けなどに使う「丸ぎり」、部分的に革の厚みを薄くする「革すき器」など。
※革包丁は最初は以下のカッタータイプをオススメします。
包丁と違い研ぐ必要が無く、切れ味が落ちたら刃を変えれば良いだけなので楽ちんです!
【穴あけのための用具】 革に縫い穴をあけるための「菱目打ち」、菱目打ちを打つための「木づち」、縫い線や飾り線を引くための「ねじネン」など。
【接着のための用具・材料】 縫い合わせ前の仮どめに使う「ゴムのり」、より接着度の高い「ボンド」、それらを塗るための「のりベラ」など。
【縫うのための用具・材料】 縫うための糸は針穴の丈夫な「メリケン針」、手縫いに適した丈夫な天然繊維「麻糸」、糸のけばだちを抑え、撚りが戻るのを防ぐ「蜜ろう※2」など。
※1 糸は選んだ革の色や好みの色を元に購入してください。
※2 すでにロウ引きされている糸もありますのであえて自分でロウ引きしたい!という方以外はそちらをオススメします。
【仕上げのための用具・材料】 床面(裏面)やコバ(切れ端)を磨くための「仕上げ材」や「やすり」など。
【金具付けのための用具】 カシメ(リベット・ホック)やカシメなどを打ち込むのに必要な「カシメ打ち棒」「カシメ打ち台」「ハトメ抜き」
実際に作ってみよう
実際に素材と道具が揃ったら次は実際に作ってみましょう。
誰にでも作れると言っても、最低限習得しなければならない技術はあります。
と言っても難易度はかなり低めになっていますので、ちゃんと進行すれば綺麗な作品が作れるよう丁寧に解説しているのがこの本のいいところです。
この本が教えてくれる基本のテクニック
革を裁つ
革に裁ち線を丸ぎりでしるしを付け、その線に沿って裁っていきます。
包丁の握り方は、刃の表を内側にし、親指を柄に添え、立ててしっかりと握るのがポイント。
柄を「グー」で握るとスムーズに裁てないのでやめましょう。
床面を洗う
仕上げ剤を使って革の床面(裏面)のけばだちを抑え、綺麗に整える作業です。
これは裏生地をあてずにカバンを仕立てる場合などに床面を洗います。
これをしないとカバンの内側がけばだった状態になってしまい、革のクズがポロポロ落ちてカバンの中の荷物が汚れてしまいます。
コバを磨く
コバとは革の切り口のことで、けばだちを抑えて綺麗に整えるのは床面を洗うのと同じですが、さらに断面を擦って磨き上げることでツヤを出します。
ねじネンで線を引く
縫い目の案内線「縫い線」は、ねじネンを使って裁ち線と平行に引きます。
縫い目を入れない革の端に装飾を兼ねて端を落ち着かせるために入れる線を「飾りネン」といいます。
菱目打ちで穴をあける
菱目打ちで縫い線に沿って穴を開けて行きます。
革の手縫いはあらかじめ開けた穴に糸を通していく作業です。
綺麗に作品を仕上げるためにもこの工程は後々とても大切になってきます。
針と糸の準備
糸は「平縫い」では縫う長さの3.5〜4倍、「クロス縫い」では4〜5倍は用意し、糸のよりが戻ったり縫い目がほどけないようろうを引きます。
また同書で使う縫い方では針を2本用意します。
平縫いをする
手縫いの最も基本的な縫い方で、両手にそれぞれ針を持って縫います。
2本の糸がしっかりと交差するので、縫い目がすぐにほどけない丈夫な縫い方です。
縫い方以外にも「糸の継ぎ方」や「縫い終わりの始末」に関しても写真や図を用いてわかりやすく指南してくれています。
レッスン形式で練習作品を作る
基礎を覚えたら次は練習作品。
同書では練習作品として3つのアイテムを用意されています。
パスポートケース
サイズも小さく、ほぼ一枚で作れるパスケース。
革の扱いや平縫いの練習に適したアイテムです。
ここで裁ちや縫いの感覚を掴んでいきましょう。
基本のトートバッグ
お次のアイテムは実用性抜群のシンプルトートバッグ。
正直これが作れたら自作バッグとしてはそこそこ達成感を感じてしまうかもしてません。
ただパスポートケースと比べ作業工程も多く、縫う長さも段違いになってくるので横着せず確実に進めて行きたいですね。
クロス縫いのミニショルダー
インパクト抜群のパッチワークデザインのミニショルダーバッグが最後のレッスンです。
主にクロス縫いの練習としてこの課題が課されているようですが、これも縫いの長さが多く、見た目以上にしんどさを感じるかもしれません。
以上の3型を作れたら、あなたはもうシンプルなレザーアイテムなら苦手意識なく取り掛かれるようになっているはずです。
自分の作りたいカバンを作ってみよう
世の中には意外とシンプルだけどカッコいいものたくさんありますからね。
トートやパスケースもですが、被せショルダーやポーチ、ベルトなんかも革製品に限っては装飾が少なくても素材感でカッコよく見えますし。
「なんとなくはわかってきたけど、まだ自分が欲しいものを作る自信がないなぁ」
そんなあなた!ご心配なく、この本には「各作品の作り方」というこれも写真と図解付きのページが続きます。
キーケースや名刺入れ、ベルトのような小物類から、カットワークのショルダー、なんとブリーフケースの作り方も紹介されています。
ゼロから作るのは大変な作業ですが、すでにあるものをアレンジするとなると難易度はグッと下がります。
これらの中から自分が作りたいカバンに近いものを探したり、そのカバンをベースに自分のアレンジを加えてみるなどをすればあなたが求めている製品にグッと近づくことが出来るのではないでしょうか。
まとめ
以下この本のざっくりとしたおさらいです。
この本を読むと…
- 革の知識(種類や手入れなど)が手に入る
- 用具・材料に詳しくなる&欲しくなる=買いたくなる
- 基本のテクニック(革の裁ち方、縫い方など)を習得できる
- 簡単な型紙が自分でおこせるようになる(←これ結構大事)
- カバン作りは楽しいという事実を体感する
いかがでしたでしょうか。
実際の本の中では写真や型紙などが丁寧な解説と共に添えられているので、この記事で紹介した内容の100倍はわかりやすく紹介されています。
私のX(Twitter)のフォロワーさんにもこの本を持ってるという方が何人かおられたのですが、皆さん共通しておっしゃっていたのは「買ってよかった」という一言でした。
一度見たらハイさよならとならず、いつも傍に置いておきたくなるそんな本だなと私は思います。
あとがき
※ここから先はこの本と私が出会った話になりますので、興味の無い方は飛ばしてください。
私がこの本に出会ったのは一番最初の就職先、カバンの企画製造メーカーに就職して1年ほど経ってからでした。
そのメーカーで作られるカバンは化繊生地(ナイロンやポリエステル)をメインに使う会社でしたので、本革を扱うようなことはほぼありません。
カバンと一言でいってもジャンルは多彩で、化繊素材を扱ったアウトドアやスポーツを得意とする会社、レザー製品を主に扱うカジュアルやビジネスバッグを作成する会社、レディースのハンドバッグがメインの会社etc…
仕事をしていると情報収集もかねていろいろなカバンを目にするわけですが、そんな中でもつい目に留まってしまうアイテムがありました。
それが「レザーのカバン」です。
シンプルで重厚感があり、耐久性に富むレザーのカバン。
長年使いこむことで革にツヤが出でくる、形に丸みを帯びてくるなどのエイジング(経年変化)も楽しめる。
なにより大人っぽくてカッコいい!!
通常なら「この革カバンを買いたい!」となるのでしょうが、そこは腐ってもカバンのデザイナーです。
「自分でつくりたいなぁ」
でも本革の知識も無ければ、そもそもどうやって手縫いをしたらいいのかわからない。まわりにも手縫いをしている知り合いがいない。
何かいい指南書が無いものかと、さっそく神保町の三省堂書店に行き、この本と出合いました。
私、職業デザイナーっていますが、本当に不器用なので正直ちゃんと作れるかが不安だったのですが、そんな不安も杞憂に終わります。
すでにこの記事の本編で書かせていただきました通り、難しい技術は省き、誰にでも作れるように優しく説明されているではないですか。
なんなら型紙も入ってますから、本当にシンプルな工程で作業が進行が可能。
工具や革の手配は必須ですが、それもモノづくりの楽しみの一つ。
この本を買ってからしばらくは会社の裁断室で革細工作りに勤しんだものです。
モノ作りは本当に楽しいです。
自分のために作るのも良し。誰かへプレゼントするために作るも良し。
この本をきっかけに、レザークラフトやカバンへの興味がもっと広がってくれると、カバン産業に身を置く人間としてはうれ
しく思います。
最後まで見ていただきありがとうございました。
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